クンダリーニの実践そのものが危険だと断定できる根拠も、安全だと言い切れる根拠も、確認できませんでした。ただ、独学の呼吸法や瞑想のあとに、不眠や幻聴などが出た症例の報告はあります。「クンダリーニ症候群」は広く認められた病名ではなく、同じ症状は別の原因でも起こります。つらいときは実践をやめて、早めに医療機関へ相談してください。
この記事は医療情報ではなく、診断や治療の代わりにはなりません。症状があるときは、自己判断で続けず、医療機関に相談してください。
「クンダリーニ症候群」とは
日本語版Wikipediaは、準備が不十分なまま覚醒が起きると、自律神経の不調、幻覚、統合失調症に似た症状などが報告されている、と説明しています。1993年には、精神科医のブルース・グレイソンが「フィジオ・クンダリーニ症候群」という名前で、この状態と精神疾患の違いを論じました。英語版Wikipediaによると、症状は感覚・運動・精神・感情の面にわたります。
ただし、これは広く認められた病名ではありません。また、米国の診断基準(DSM-IV)には「宗教的・スピリチュアルな問題」という区分があり、スピリチュアルな体験に伴う苦痛が、急性の精神病と取り違えられうることが指摘されています。
報告されている症例
2022年のインドの論文には、次のような症例が載っています。19歳の女性が、約3か月、独学でハタ・ヨーガの呼吸法や瞑想を、時間を決めず1人で続けていました。体の根元から頭へ何かが昇っていく感覚のあと、眠れなくなり、ないはずの声が聞こえるようになり、やがて食べない、話さない、体が固まったように動かない状態になって入院。薬による治療で改善しました。
これは1例の報告です。実践が原因だったと断定しているわけではなく、起きやすさや割合を示すものでもありません。一方で、指導者がおらず、時間を決めず、睡眠が乱れる状態で続けていた、という点は、自分の実践を見直すヒントになります。
すぐ受診を考えたい状態
- ないはずの声が聞こえる、見張られている・自分のことを噂されていると感じる
- 数日間ほとんど眠れない、食べられない
- 話しかけられても反応できない、体が固まって動けない
- 仕事や家事が、いつもどおりにできない
- 自分を傷つけたい気持ちがある
受診先は、精神科や心療内科が相談しやすい窓口です。命に関わると感じたときは、119番に連絡してください。つらい気持ちを話せる場所が必要なときは、厚生労働省の「まもろうよ こころ」に、電話やSNSで相談できる窓口の一覧があります。
受診のときは、「クンダリーニの実践をしている」ことを、そのまま伝えてください。何をどのくらいしているかを話すことが、診察の手がかりになります。
実践を続けるなら、守りたいこと
ここからは、編集部としての安全面の提案です。症例報告の内容を踏まえてまとめました。
- 1回の時間を決めて、短く区切る(たとえば10分程度から)
- 夜遅く、眠る直前は避け、睡眠時間を削らない
- 息を速く繰り返す、長く止めるといった負荷の強い呼吸は避ける
- 体調が悪い日、睡眠不足の日は休む
- 感覚が強すぎる、怖いと感じたら、すぐにやめる
- 持病・服薬がある人、妊娠中の人、精神科に通院中の人は、事前に主治医に相談する
- 1人で抱え込まず、信頼できる人に話す
「覚醒」と「病気」は、見分けにくい
スピリチュアルな体験と、治療が必要な状態は、感覚だけでは見分けがつきません。専門家でも判断が難しいことがあります。「覚醒だから大丈夫」と決めつけず、日常がつらくなっているなら、体の側の原因も確認してください。感覚の意味は、あとからゆっくり考えられます。
呼吸だけで試す手順は実践ガイドにありますが、読む前に、この記事の「守りたいこと」を確認してもらえるとうれしいです。